急性の高血圧症は重篤なものとして以下が知られている
高血圧緊急症
高血圧準緊急症(高血圧切迫症)
急病センターで「少しだけ頭が重たい血圧 210/128mmHgの高齢女性」が来て対応に悩んだので勉強しなおしてみました。
今日の記事で勉強できること
・高血圧準緊急症に対する治療のEvidenceはあまりないが、下げるのであれば血圧はBP 160/100mmHg以下くらいを目標に内服降圧薬を行うことを検討する。患者の心血管・脳血管リスクなどにより判断していくしかない。
★Uptodateは比較的下げることを推奨しているような記載
★American College of Emergency PhysiciansやJournal of Hospital medicineではあまり下げないことを推奨している。
・クロニジンやカプトプリルのような短時間作用型が使われることが多いが、アムロジピンのような長時間作用型を選択するDrもいる。
★高血圧緊急症(Hypertensive emergencies)とは
BP 180/120mmHgを超えて以下のような臓器障害を伴うものを高血圧緊急症という
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ここからは高血圧準緊急症についてのお話です。
結局のところHigh qualitiyなエビデンスはなく、あくまでも筆者らの推奨
血圧をさげるかどうかは非常に悩ましい。
救急外来にくるような無症状の重度高血圧症の患者の降圧は有効性が証明されていない。静かな部屋で30分寝かせておくだけで30%の患者が20/10mmHg以上さがる。
降圧で虚血が起こることもあるので、結局はリスクベネフィットを勘案して決める。
ここまでの前提をもとに
Up to dateでは
基礎に高血圧がある場合など含めて、どちらかというと血圧を下げることを検討するような旨の記述がされている。大動脈瘤や脳動脈瘤があることがわかっている患者などは積極的に降圧する。ニフェジピンの舌下投与はすべきでない(アダラートの脱カプセルですね!)。下げるならBP 160/100mmHg以下くらいを目標に、ただし最初の数時間で平均動脈圧が25-30%以上は下がらないように注意する。使う薬は使う薬剤はクロニジンまたはカプトプリルのような短時間作用型が好まれる。ただしアムロジピンなどの長時間作用型を使うDrもいる。
処方例
★カプトプリル 6.25-12.5mg p.o.
★ニフェジピンCR 30mg p.o.
★メトプロロール 50mg p.o.
American College of Emergency Physiciansでは
検査に関してはLevel Cの推奨として①ルーチンの臓器障害のスクリーニングは不要、②フォローアップが出来なさそうな人の場合には主に腎機能のスクリーニングを検討(それが入院させるかに影響することがある)とされ、治療に関してはLevel Cの推奨として①ルーチンでの投薬は不要、②フォローアップが出来なさそうな人の場合には慢性の高血圧の治療の一つとして長時間作用型での治療を検討、③いずれにせよ外来でのフォローは必要とされています。
Journal of Hospital medicineでは
基本的には病歴、身体所見のみで大丈夫で検査がいることは限られたケースのみ。臓器障害を疑う所見がなく無症状の場合には安心させ安静にさせて再度アセスメントするべし。rapid actingな降圧薬の内服や静注降圧薬は使用しないように。外来でコントロール不良な高血圧がある場合や高血圧として治療されていなかった患者の場合には慢性期の治療として長時間作用型の降圧薬を検討する。
フォローについて
数時間外来でフォローしたのち、帰宅できるケースが多い。
治療するにしてもしないにしても、かかりつけや自院での翌日の受診を強く促す
まとめてみた感想としては
とりあえず救急外来で高血圧準緊急症をみたら
静かなベッドに30分-1時間安静に横になってもらい再検査
それで大丈夫ならばフォロー方法を決めて帰宅
だめならベースに高血圧あるか、コンプライアンスどうか、出血梗塞リスクなどを検討しリスクベネフィットをよく勘案して治療するか決める
あとがき
いやー。かなり見る文献によって印象が違いますね。どこまでも悩ましいんだなと思いました。投与するならやはり僕はアムロジピン2.5mgの内服を出すことが多い気がします。ベースに高血圧ない人は抗不安薬を投与することもありますが、抗不安薬といったものは記載があまりありませんでしたねー。
参考文献
Up to date:Management of sever asymptomatic hypertension
日内会誌 104:268-274,2015
Hypertensive emergencies CCSAP 2018 Book1 Medical issues in the ICU
J. Hosp. Med. 2018 December;13(12):860-862
Ann Emerg Med. 2013;62:59-68.