2019年8月1日木曜日

骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)


骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)


・疾患頻度は経口投与では患者10万人あたり発生率は1.04-1.69人とされている。

・診断基準とステージは表を参照。

・リスクとしてはやはり口腔内不衛生、侵襲的歯科処置などがあげられている(表参照)

・侵襲的歯科治療前のBP製剤の休薬

実はやめた方がいいかどうか明確なエビデンスはない。

FDAや米国口腔顎顔面学会(AAMOS)ではBP製剤治療開始後4年以上の症例に介しては顎骨壊死のリスクが高い可能性が有ることが示唆されており休薬を検討するべきとしている。日本口腔外科学会も同様のスタンスをとっている。

侵襲的歯科治療の前に2か月、治療後2か月(どうしても急ぐようであれば2週間後に上皮化を確認して、感染がなければ可)の休薬期間を設けることを検討する必要がある。



出展:

骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016


2019年7月25日木曜日

Aortoveno fistula 動静脈瘻


腹部大動脈瘤のうち大動脈と静脈瘻は0.2-1.3%程度の発症率とされる。

瘻の発生部位としては下大静脈が多く、腸骨静脈、腎静脈の順に多い。



術前診断は困難な例が多く致死率も高い。

腹痛、背部痛、拍動性腹部瘤などの局所症状に加え、心不全症状がある。



McAuleyは動静脈瘻のTriadとして

①突然に発症する高心拍出性心不全

Thrill、血管雑音を伴う腹部の拍動性腫瘤

③下肢の虚血、腫脹



瘤周囲の連続性雑音80%程度の聴取されるため、非常に重要な診察所見となる。



2019年7月16日火曜日

過換気症候群による失神



過換気発作による失神

若年男性のトリガー不明の過換気発作による失神症例を診たのでまとめ。



まずは日本における年齢、性別分布以外にも若年男性もそこそこの割合でいる。


誘因については判明しないことが半数くらいあるようだ。過換気症状のきっかけが失神ということもあるみたい。


随伴症状の中に意識消失というのが含まれている。


以上、日臨救医誌 JJSEM 2015;18:708-14「救急車で当院へ搬送された過換気症候群653例の臨床的検討」より。

海外からも報告が少数あるようで、急激なPaCO2PaO2の変化により脳血流が減少し失神すると記載されている。
Clin Med Res. 2003 Apr; 1(2): 137–139.  「Hyperventilation Induced syncope No need to panic
J Appl Physiol 116: 844–851, 2014.  「Hyperventilation, cerebral perfusion, and syncope

教科書的にも過換気発作による失神と記載がある。
日臨救医誌の報告ではその中にSAH症例なども含まれていたようで、論文からは純粋に過換気で失神した症例があるのかはわからなかった。また海外からの論文にも機序や自施設での経験症例などが記載されているが、報告はかなり限定されている印象だった。

過換気発作後に無呼吸となり失神する症例もあるようですね。

今回自分が経験した症例は、ほかに危ない失神の原因もなさそうであり、過換気で失神したように思われる症例だったので調べてみたら意外と報告や教科書の記載がるようで勉強になった。

2019年7月10日水曜日

シベンゾリンによる重症低血糖

当院で経験した症例
80代女性
遷延性の重症低血糖および低血糖性脳症で当院を受診
20g/hr以上のブドウ糖負荷が必要な低血糖状態であった。数日で当負荷は中止でき、意識も回復した。

採血にてシベンゾリン 931ng/ml、インスリン 25.8μg/ml、コルチゾール・甲状腺正常
各種培養陰性、MRI陰性 



シベンゾリンによる低血糖について
シベンゾリンはⅠa群の抗不整脈薬でATP-sensitive Potassium(KATP) channel blockerであり、それにより抗不整脈作用を発揮する。しかしKATP受容体を阻害することにより膵臓のβ細胞からのインスリンの分泌が促進される。

シベンゾリンの低血糖は高齢者に多く、何らかの理由で腎不全を起こしたことにより、シベンゾリンの血中濃度が上昇することによりインスリン分泌が増加して低血糖を起こす。またCYP450で代謝されるため、そこでの相互作用でも濃度が上昇することが知られている。

これまで5例の報告では
60歳以上で発症することが多く、平均年齢は72歳であった。
初発時の血糖は37mg/dl4例がCre 2mg/dl以上であった。
シベンゾリンの血中濃度が示されていた671ng/ml, 1551ng/mlであった。

Intern Med 56:1527-1529,2017

2019年7月3日水曜日

よくわからない低血糖


副腎不全、甲状腺機能低下
重症感染症
虚血系
肝硬変、肝不全
腎不全
アル中
非常にまれにインスリノーマとか、インスリン自己免疫疾患とかホルモン系
薬剤
を考えます。

今回シベンゾリンによる超重症遷延性低血糖、低血糖性脳症を経験して薬剤について調べてみました。

一般的に薬剤性の低血糖はSU剤やインスリンをはじめとする糖尿病薬によるものが有名ですが、非糖尿病薬でも起こることを痛感しました。

有名なものとしては
シベンゾリン
ガチフロキサシン
ペンタミジン
クイニン
インドメタシングルカゴン

ほかに
抗菌薬(ST合剤やキノロン)
降圧薬(ACE阻害薬、利尿薬)
NSAIDs
ベンゾジアゼピン
抗精神病薬(リチウム、ハロペリドール)
抗不整脈薬(ジソピラミド、リドカイン)
抗てんかん薬(フェニトイン)
H2拮抗薬
ワーファリン

参考文献
Up to dateなど

2019年7月2日火曜日

医療の「Science」と「Art」

医療には「Science」と「Art」の二面性がある。 

「Science」はエビデンスがある事/正しい事が決まっている部分
「Art」は何が正しいか決まってない部分/答えがない部分

「Science」の部分はひたすら正しい事、当たり前のことを提供しなきゃいけなくて、それは医者として"最低限"の資質だという事。そのために僕らは日々勉強している。

「Art」の部分こそ、僕らが医者である理由というか、その時に「患者さんのために」何がしてあげられるか/何ができるかという事が本当に大事だということ。その人にしか出来ない手技とかもArtかもしれない。

医者は「治せる病気を治すのは当たり前」で、「治せない病気や、答えのない問題にぶち当たった時にどうしてあげられるかが大事」という事なのだろう。

2019年6月3日月曜日

Interstitial pnemonia with autoimmune features(IPAF)

間質性肺炎には膠原病に続発して起こってくる2次性の間質性肺炎が有名です。

ときに間質性肺炎が膠原病症状に先行することが知られていて、特に筋炎などがあります。

今回多発関節炎症状で受診して、両側肺にOPパターンの間質影のある高齢男性を診た際に勉強した概念にInterstitial pneumonia with autoimmune features(自己免疫疾患の特徴を有する間質性肺炎)があることを知りました。歴史的にはUndifferentiated conective tissue diseasem Lung dominant connective tissue disease, Autoimmune featured interstitial lung dieseaseなどと様々な分類があったようですが、European Respiratory Society(ERS)とAmerican Thoracic society(ATS)がIPAFという概念にまとめて診断基準を出しています。

間質性肺炎発症時に、典型的な膠原病と診断しきれない、が膠原病の要素がある人たちをひとくくりにしてIPAFと呼ぶようです。

診断基準は以下です。




血清学ドメインの中にRFやANAなど比較的特異度の低い抗体が入っておりそこの判断もむつかしいように思いました。また関節炎も比較的いろんな疾患でも見られるので、今回の症例は関節炎+RF陽性+OPパターン肺炎でIPAFと考えましたが、なかなかこの組み合わせでの判断は難しい領域だと思いました。

Jpn.J.Clin.Immunol.,40(3) 139-144(2017)

2019年5月22日水曜日

血液ガスの読み方 part1

血液ガスの読み方についてです。

今回はまずは酸塩基平衡の意味付けについてです。


























2019年5月19日日曜日

コンサルテーションのお作法

ショートプレゼンに引き続き、医者として非常に大切なコンサルテーションのお作法についてまとめました。