2020年12月12日土曜日

舌咬傷は痙攣とその他の疾患を鑑別できるか? ~横を咬んでるのは痙攣!!ってほんと~

 

 今回の記事で勉強できること

・舌咬傷があることは、痙攣が起こっていたことを示唆する
・横を咬んでいることは、失神からも、偽失神・痙攣(精神的なもの)からも鑑別できる
・舌咬傷がないことは、痙攣を除外しない

 

舌咬傷の頻度

成人の痙攣における舌咬傷は23-27%程度とされている

痙攣における、舌咬傷の感度は30%前後だが、特異度は95%以上!陽性尤度比 8-10!!と非常に有用な所見となっている。

 

成人の失神における舌咬傷は0.6%程度とされている

先端の舌咬傷があると感度 0.11(95%CI 0.04-0.36)、特異度 99.8%(95%CI 98-1)、陽性尤度比 5.32(95%CI 0.257-110)とされている。

 

痙攣と失神における舌咬傷の有用性


痙攣と失神で比べると上記のように頻度が痙攣の方が高いがOR 12.26(95%CI 3.99-37.69)となっている。舌咬傷があることは、そこそこ痙攣の方に鑑別が寄るってことですね。

 

痙攣と偽失神(精神的失神)


痙攣と偽失神・痙攣で比べても舌咬傷は痙攣の方がおおく、OR 3.07(95%CI 1.66-5.68)となっている。ただ、偽失神・痙攣でも、そこそこのケースで舌を咬んでいるため完全な鑑別には使いにくい。

 

舌の咬む位置って重要なの??

舌の横を咬んでいる所見は痙攣に対して

感度 11.3%(95%CI 0.76-1.64)特異度 99.8%(95%CI 97.9-1)陽性尤度比 49.275(95%CI 3.009-806.972)とされており、もし診察で見つければかなり強力な診断根拠となりますね。


舌の横を咬んでいるのは痙攣と偽失神・痙攣を見分けるのに

OR 13.86(95%CI 1.80-106.53)となっている。偽痙攣・失神では舌の横をかんでいることはかなり少なさそう。偽失神・痙攣では、舌の横を咬んでいることはまれで、舌の横を咬んでいれば本物痙攣をより考える所見。

 

まとめてみた感想

こないだの当直の時に「急にうなった後に体が硬直して一点を凝視してるのが数分続いた後に、興奮状態になって家の外まで出て行って排尿した」っていう主訴できた患者さんがいた。「痙攣でしょ」ってなったんだけども、診察してみたら舌の横を咬んでて「こりゃ絶対痙攣でしょ」ってなったんだけども、どれくらい意義がある所見なのかは「先輩からの言い伝え」以上でも以下でもなかったので調べてみた。

やっぱり舌の横を咬んでるのは結構大事な所見なんだな。こういう所見、見つかるとうれしいね。

 

参考文献

Seizure2012 Oct;21(8):568-72
Seizure. 2013 May;22(4):328
Seizure. 2013 Nov;22(9):801
Epilepsy Behav2012 Oct;25(2):251-5

 

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