病院総合医を育てたい。そんな気持ちで日々働いている総合内科医のブログです。論文から学んだこと、読んだ本のことなど、自分の備忘録もかねて皆さんに役立ちそうなことを書いていこうかと思います。
2020年10月30日金曜日
カテコラミンは末梢ルートから安全に投与できるか
2020年10月25日日曜日
髄液蛋白細胞解離(Albuminocytological dissociation)に出会ったら
腰椎穿刺して髄液の蛋白細胞解離があったときにどんな疾患を考えるか。
髄液蛋白細胞解離のポイント
・髄液蛋白 45mg/dL以上、細胞数陰性&血糖正常で拾い上げよう
・鑑別診断のメインは多発神経炎、脳炎/脳症、腫瘍、脳梗塞、痙攣
・良性の頭痛や精神疾患でも起こりうることを認識
★髄液たんぱくの正常値
髄液は通常ではBlood-CSF barrierによりほとんどが漏出しない。
CSF Protein: 23-38mg/dL
★髄液蛋白細胞解離の定義
あまり明確なものはないようだが、髄液蛋白 45mg/dL以上、髄液細胞正常の際を蛋白細胞解離とされているので目安になると思われる。
★髄液蛋白が高値になる疾患は(今日の治療指針より)
・髄腔内に出血があり、血漿蛋白が混入した時
脳出血、SAH、脳腫瘍、外傷、硬膜下血腫など
・血液脳関門障害があり、血漿蛋白が髄腔へ移行した時
髄膜炎、脳脊髄腫瘍、ギランバレー症候群、脳梗塞、多発神経炎など
・中枢神経系でIgGの産生が亢進するとき
多発性硬化症、神経梅毒、ヘルペス脳炎など
・髄液のターンオーバーが障害されたとき
脊髄腫瘍
★蛋白細胞解離となる鑑別
かなり多彩な疾患で起こることがわかりますが
多いものとしては
・多発神経炎
・腫瘍
・脳炎/脊髄炎
・痙攣
・脳梗塞
・炎症性白質病変
・良性の頭痛
・Transient encephalopathy/neurological symptom(一過性の脳症/神経症状?)
・わずかだけども精神疾患でも上がることもある(0.6%)とされている
★参考までにギランバレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン2013に記載されている髄液蛋白細胞解離の鑑別
AIDP/CIDP
DM性多発ニューロパチー
急性間欠性ポルフィリア
アルコール性ニューロパチー
中毒薬剤性ニューロパチー(鉛、ヒ素、ビンクリスチンなど)
POEMS症候群
アミロイドニューロパチー
異染性白質ジストロフィー
クラッペ病
悪性新生物の脊髄転移
神経鞘腫
など
髄液蛋白細胞解離というと"脱髄疾患"みたいな簡単な枠組みしか覚えていなかったがかなり多岐にわたる疾患が想定されないといけないようだ。腫瘍や梗塞をみのがさないというのも非常に大切だとわかった。
※紹介した論文では髄液細胞数 5×10の6乗以上、髄液赤血球数 50×10の6乗以上、髄液糖 2.5mmol/L以下、18歳以下は除外されている。