Lancetのreportが出されていました。
1.コロナウイルス(CoV)とは
RNAウイルスの一種で人やそのほかの哺乳類に広く分布している。
ほとんどのHuman coronavirusは軽い症状となるが、Sever acute respiratory syndrome coronavirus(SARS—CoV)、Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)は過去20年で10000人の感染を起こし、死亡率はSARSで10%、MERSで37%であった。
2. 2019-nCoVについて
2-1.診断
2019年に原因不明の肺炎が中国武漢で流行し、下気道検体から2019 novel
coronavirus(2019-nCoV)が検出された41例を確定診断として発表している。家族内集団感染が1ケースみられている。
下気道検体でRT-PCRを行い、そのほかの呼吸器感染症をきたすようなInfluenza, avian
influenza, respiratory syncytial virus, adenovirus, parainfluenza virus,
SARS-CoV, MERS-CoVの検査がされ、培養などで一般的な呼吸器感染症の細菌・真菌の検査がされている。
2.2. 症状、経過
平均年齢が49歳、男性の割合が73%と高い。
最も典型的な発症時の症状は発熱(98%)、乾性咳嗽(76%)、倦怠感や筋痛(44%)であり、少数例が訴えた症状としては喀痰(28%)、頭痛(8%)、血痰(5%)、下痢(3%)であった。SARSやMERSに比べて上気道症状が少ない。並存症がある患者は32%程度だった。
患者のうちの50%が約8日間で呼吸困難感を発症した。ICU入室までは10日間程度とされている。
2-3. 来院時の検査所見などの特徴
採血ではWBC 4000/μl以下の白血球減少が25%でみられ、Lymp 1000/μl以下のリンパ球減少が63%に見られた。ICU入室する患者のほうが来院時のPT時間の延長およびD-dimerが高い傾向にあった(ICU patients PT
12.2sec[IQR 11.2-13.4], D-D 2.4mg/L[0.6-14.4]に対して、nonICU patients PT 10.7sec[IQR 9.8-12.1], D-D 0.5mg/L[IQR 0.3-0.8])。
5人の患者で好感度トロポニンIは上昇しておりそのすべてがウイルス関連心筋障害の診断がついている。
来院時ほとんどの症例がプロカルシトニンは正常であった。
すべての患者で来院時のCTで異常所見が指摘できた。98%の患者が両側の陰影で、ICU入室患者の来院時のCTの典型的な所見はBilateral multiple lobular and
subsegmental areas of consolidationであった。非ICU例では両側のGGOと区域性の浸潤影がみられていた。
2-4. 治療と死亡率
インフルエンザの流行期であり、経口もしくは経静脈的な抗菌薬投与、oseltamivirのempiric treatmentが行われている。また重症肺炎と診断された場合にはmPSL 40-120mg/dayの投与が追加されている。
抗ウイルス療法については、これまで抗ウイルス療法がCoV感染症に有効であることは証明されていない。2019-nCoVも同様で有効な治療法はわかっていない、Lopinavirとritonavirの組み合わせでの治療でのRCTが組まれて進行中。
ステロイドについてはMERSやSARSではステロイドは死亡率改善に効果はなくウイルスのクリアランスを遅らせたとされている。ステロイドの全身投与はルーティンには行わないべきであるとWHOから推奨あり。今回の2019-nCoVでもICU caseでも半数にしか投与されていない。2019-nCoVに対してステロイドが有効化はわかっていない。
合併症としてARDSが29%、心筋障害が12%、二次性感染(主には院内肺炎のことのよう) 10%、ショック 7%であった。今回の報告では死亡率は15%であった。
3.そのほか
人-人感染の可能性があり飛沫核感染(空気感染)対策としてN95マスクとガウンの装着を強く推奨。
Lancet Published:January 24, 2020
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30183-5/fulltext